鬼道衆の面々に符咒封録で盛り上がってもらった(タイトル)



此処は鬼哭村。九角天戒の屋敷の一室だ。その広い座敷に頭首九角を筆頭に
九桐、桔梗、風祭、緋勇、そして嵐王、奈涸と集まっている。


「ほう。符咒封録、とな。」

と、九角が興味深げに手元の小さな札を見ながら言った。

「そうそう。符咒封録。」

「…で? それがどうした?」

と、言ったのは九桐だ。

「やあ、実は自分の子孫(でないかもしれないけど)がねぇ、将来異世界に行って氏神と呼ばれて? 更に
カードバトルを行う羽目になるんだって。凄いよねー、俺の子孫。カードだよ? ずっとオレのターン! なーんてね!」

「…かぁどばとる。」

「…ずっとおれのたぁん。」

と、緋勇の言葉を棒読みで言ったのは桔梗と風祭だ。今ぺらぺらと手元の符について説明しているのは緋勇である。
しかしその緋勇の言っている言葉はおよそ江戸時代には聴き慣れない言葉ばかりだった。
暫し黙る一同。恐らく仲間達なりに緋勇の言いたい事を一生懸命解釈しようとしているのだろう。

「たーさんの言ってる事は良く分からないけどさ、詰まる所、これは符だろう? 符で戦う…という事は
たーさんの子孫とやらの味方も陰陽師なのかい?」

と、かの有名な陰陽師を父に持つ桔梗が緋勇の言葉を自分なりに解釈して(時間はかかったが)
辿り着いた疑問を口にした。

「うーん。陰陽師…というか、勧請師? あんまり聞いた事は無いよねぇ。」

「勧請師…ねぇ。」

「確か、氏神? を呼び出して戦わせる事が出来る…とかだったかな? あんまり覚えてないや。」

と、互いに喋る二人。此処で風祭が不機嫌そうに口を挟んだ。

「…おい。」

「ふぅん。それだけ聞くと陰陽師のそれと似てる様な気もするけどね。」

「おい!」

「実際かなり近いんじゃないかな?」

「おーーい! お前等っ! 無視するな!」

と、此処で遂に風祭が立ち上がって叫んだ(というより吠えた)

「…どうしたんだよ、オッキー。急に大きな声出して。」

「どうした風祭。発言時は手を挙げないと駄目だぞ?

今まで静観していた九角も諌める。

「え!? す、すいません! ……って、でなくて!」

九角に諌められ、一瞬申し訳ない顔をした風祭だが、すぐにハッとして再度叫んだ。

「根本からおかしいでしょ、この会話! 第一、たんたんの子孫の話なんて、何処で
知ることが出来るって言うんですか!!」

「あ、そっかー。俺ってば、説明不測だったね。ゴメンね、オッキー☆もう、たんたんのドジっ子さん! テヘ☆」

と、緋勇はチョロッと舌を出して自分の頭をコツン☆と小突いた。

「おぞい!(おぞましいの略)というか俺を馴れ馴れしくあだ名で呼ぶんじゃねぇ! そしてテヘ☆って何だ、可愛い子ぶるな!」

「それを言うならそんだけ喧嘩腰な癖して、たんたんとかいうあだ名で呼んでるお前も相当だと思うぞ?」

と、ニヤニヤしながら緋勇が風祭の頭を力一杯、それこそ「縮め、身長!」と言わんばかりにグリグリと撫でた。

「こらこら、師匠。あんまり風祭で遊ばないでくれよ?」

と、言う九桐も顔は笑っている。風祭は更にムキになって両手をブンブンと回している。
その場が一時ほんわかムード(一名除く)で包まれた後、漸く嵐王が口を開いた。

「そうだな、緋勇殿。貴殿の話…。些か…というより、かなり非現実な話だ。その子孫云々を知った経緯を
明確に話してもらいたいな。」

「はあ、明確に。」

「うむ。明確に、だ。」

「――分かった。」

真顔でこくりと頷く緋勇。そしてゆっくりと口を開き――、一言。

「WSで遊びました。」


わんだーすわん。


……今時?


暫し黙る一同。それを更に畳み掛ける緋勇。

「そうしたらGBAでリメイクされていると知りました。その時、追加符で俺達も出ると知りました。」


げーむぼーいあどばんす。


……今更遊んだの?


「……そうか。」

嵐王も何か悟ったのか、緋勇を可哀相な目で見ながら押し黙った。

「あ、何だよその目。お前が明確にって言うから正直に言ったのに、それはないだろ?」

と、少し顔を赤くして緋勇がぼやいた。

「今更GBAかよとか思ってるんだろ! いやっ! ちょっと恥ずかしい!」 

と更に手で顔を覆う緋勇。しかしそんな緋勇に助け舟が下りた。

「緋勇君。照れる事は無いよ。あれには俺も出演しているからね。」

そう、今まで傍観していた忍び兼、骨董品店を営む奈涸だ。忍び過ぎて既に骨董品店の方が本業になりつつあるのだが。

「な、奈涸! だよねー!? お前も知ってるよね!? あっちで俺の子孫からガッツリ儲けてたものね!」


儲けてるのか、やはり。


一同心の中で突っ込む中、味方を得た緋勇は嬉しそうに奈涸の手を握った。

「ふふ。緋勇君の言っている事は本当だ。だって、俺は子孫(でないかもしれないが)から直々に声がかかったからね。
GBAでは店主をやってください、その鑑定眼、しかと眼に焼き付けます! …とね。」

おいおい、それは無いだろう…。と思いつつも「いや、こいつの子孫ならあるかも。」と変に納得する一同。

「…ゴホン。では、本当にそのげぇむぼ…、いあどばん、す…? に我々も出るのだな?」

と、九角が念を押す。何気にGBAと言えてないのが九角らしい。

「そうそう。まあ、あくまでストーリーには関わらない、追加符なんだけどさっ!」

「そう。カードをパックで売ったりしてね。」

微妙に緋勇と奈涸の会話が噛み合っていないのだが、一々突っ込んでいてもキリがないので、話を進める事にした。
此処でカード…基、符の種類について詳細に語られる。



「――ふぅむ。それは大変興味深いな。例え出合った事が無くとも、その“氏神”に縁の強い者が、
符という形で現れるとは。更に符がその者の力をキチンと受け継いでいる。」

何分後、何だかんだ言ってこういう物が大好きな嵐王は先程より随分と興味を持ったようで、ひっくり返したり、
透かしてみたりと頻りに符を見て弄っている。

「ある意味何でもアリだよねぇ。ほら、これ俺、俺。」

と、緋勇が自分の後姿が描かれている符を嵐王に手渡す。

「しかも人物符、土地符、呪詛符と様々な物があると…。これは興味深い。
これを儂の式神に応用すれば、なかなか面白い物が作れるのではないだろうか。」

「でもまあ、勧請師が居ないと全く使えないんだけどねー。」

「いやしかし、それでもこの符自体に価値がある。…是非ともあちきの方でもジックリと研究してみたいものですねぇ。」

仮面では分らないが、声色が嬉々としている。研究者の血が騒いで仕方がないのだろう。

「…嵐王、別。もう一人の自分が出てる。」

その証拠に、喋り方が支奴になっている。流石に緋勇も苦笑しながら突っ込んだ。
そして、暫し符を眺め、ブツブツと言っていた嵐王だが、突如立ち上がり、叫んだ。

「……閃きましたよっ!!」

バサァッ…! と仮面と外套を剥ぎ取る。その中身は支奴の物そのままだった。

「うわああー! 嵐王が支奴に戻ったー!! ってか、厚着にも程がある!」

ビクッと身体を震わせて驚く緋勇。しかし九角はさして驚く様子も無く、

「…嵐王、何を閃いたんだ?」

と、平然と尋ねた。

「天戒ってば、これを流すんだ…。流石天然だよね…。」

と、緋勇がぼやく中、嵐王こと支奴がウキウキと語りだした。

「緋勇さん、これをあちきに貸してくれませんかねぇ。この発想と科学の力を併せれば、
更なる式神で皆さんをお守り出来ますよ!」

「ほう、それは凄そうだな。」

と、九桐が顎に手をやり感嘆の声を上げる。

「嵐王のいう式神ってのは本来のと原理は違うけど、実際使ってみると頼りになるからねぇ。」

と、これは桔梗。

「是非完成したら俺の骨董品店にも並べてみたいものだな。」

と、これは奈涸だ。…というか商品ではなく、忍びの仕事で活用してもらいたいものである。

「ああ。下忍達にこういった補助があると、ここぞという窮地で助かるかもしれんな。現に嵐王の式神には
良く助けられてきたからな。良い案だと思うぞ。」

更に九角もはっぱをかけるもんだから(しかも素だから侮れない)

「ですよね、流石天戒様! そんなに皆さんに期待されちゃあ、あちきも一層力が入るってもんです!
さーて、頑張りますよぉ!」

と更に舞い上がる支奴。

「でも、アレですよねぇ。」

と、急に声色を下げてポツリと呟く支奴。

「アレとは? どうした、嵐王。」

「やはり、これだけの代物を一人でやるにはそれなりの労力が…。更に科学…、まあ発明には成功と失敗が付き物ですから、
此処は一人か…いいえ、少なくとも二人。それ位は協力者が居てくれると、随分と助かるんですけどねぇ…。」

そう言って、支奴は笑顔で交互に緋勇と風祭を見つめた。


……何この流れ。マジヤバイ。


そう感じた緋勇と風祭は、支奴がとんでもない事を言い出さない内にこの場から離れるべく、
我先にと競って扉まで駆け出した。

「逃がしませんよ。――はい、“自走式捕獲装置・電伝虫”。」

『へぶぁっ!!』

支奴お手製の投網にかかって派手にすっ転ぶ緋勇と風祭。

「はいはい。更に念には念を…っと。――“粘着弾発射装置・米丹”。」

『餅っ!』

更にべとりとしたトリモチが二人を襲う。

「はい、“粘着弾発射装置・米丹”、連打連打連打。も一つオマケに連打。」

「追加来たー!」

すっかりトリモチに埋もれた二人を見下ろしながら、支奴が言った。

「二人とも、武芸の達人ですからねぇ。網位じゃ逃げられちゃうでしょう? やはり行動力の一つや二つ位、下げとかないと。」

にこにこと笑顔で寄ってくる支奴。緋勇と風祭は精一杯暴れて喚いた。

「い、嫌です! 俺、まだ死にたくありません!」

「畜生っ、嵐王! テメェ、ぶん殴ってやるっ!! おいこら、これを取れ!」

「ちょっとオッキー、暴れるなって! 更にトリモチと網が絡まって…! って、うわっ!」

そんな二人を見て、支奴は悲しそうに一つ溜息を吐くと、九角を振り返って問うた。

「ですって。天戒様、どうします?」

すると九角は不思議そうな顔をして、

「二人とも、何をそんなに嫌がるのだ? 嵐王がお前達に酷い事をすると思うか?
それにこの発明が我が下忍…基、村人達の助けになるやもしれんのだぞ?
是非、嵐王の力になってやってくれ。」

と、一点の曇りの無い目で頼んできた。

「この純粋オーラ、眩しい!!」

この時、確かに九角からは後光が見えたと後に緋勇は語った。

「ですって。お二人さん。」

そしてその瞬間、支奴の勝ち誇った笑みを確かに見たと風祭が更に語った。



――さて、その後、新・式神が開発されたか否かは定かではないが、後日九桐が茶を飲んでいると、
ボロボロになった二人がドタドタと必死の形相で現れたが、声をかける間も無く、あっという間に嵐王の“萬力鎖”で
連れ去られていった、と語ったという。




〜後書き〜

何 だ 、 こ れ (笑)

結局緋勇は最初自分の子孫(ではないかもだけど)って凄いんやぞ〜って自慢したかっただけなんだと思います。
それがあれよあれよと流れて嵐王(支奴)の研究心に火を付けちゃったんだと(笑)
途中から支奴に呼び方が変わってるのはそっちのがイカレっぷりが伝わるからです。嵐王だったら
そこまでハジケきれない。でも九角達からすれば嵐王なので、緋勇を除き、皆嵐王って呼んでます。……紛らわしい(笑)
後どうしても奈涸の喋り方が子孫(かもしれない)と似ちゃって困りました。私の中の飛水一族のイメージってああいうのなんですねえ(苦笑)

GBA版符咒封録、管理人は結構前に遊んでましたよ。シリーズキャラ全てが出てくれるので、大変お気に入りです。
何回クリアしたの?って位。まあ、カードバトルは本当に下手なんで、何も出来ないままゲームオーバーなんてザラでしたが(苦笑)
WSはやってないけど。攻略本だけ持ってたりします。
鬼哭村は山奥だから、流通が遅いんだと思ってください(こじつけ)大体の流行は鬼道衆の面々が江戸に下りた際持ってくるんだと思うよ。
後はクリスやほのかちゃん、奈涸の情報。

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