〜もし緋勇が真神學園在学中に葉佩が遊びに来ていたら〜なんちゃってシリーズ番外編。
※色々とおかしいとか突っ込みは駄目!(笑)



此処は真神學園。緋勇龍麻が通う學園である。一日も終わり、いつもの気心の知れた仲間達と下校するべく歩いていた。


「なあ、今日も行こうぜ。いつものラーメン屋。」

仲間の一人、自分が緋勇の一番の親友だと断固として譲らない男、蓬莱寺京一が声をかける。

「良いねえ、賛成っ! ボク、お腹が空いちゃったよ。」

こちらのボーイッシュな少女は緋勇が密かに影のヒロインと呼んでいる桜井小蒔だ。

「だよな、この寄り道も後々麗しい思い出として残るんだから、とことん謳歌しないとな!」

「お前等は……。仕方ないな。」

わいわいとはしゃぐ京一と小蒔。そんな二人を呆れ口調で、しかし顔は笑いながらぼやいたのは、緋勇がお父さんみたいだと
お気に入りの醍醐雄矢。

「うふふ、良いわね。皆と一緒の寄り道、私は好きだわ。」

と、最後に笑ったのは見た目は好みなのに蓋を開けば最強聖女の美里葵だ。

「よっしゃ、決まりだなっ。生徒会長のお墨付きだ。怖いモンなんてねぇだろ! なっ、ひーちゃん。お前も行くだろ?」

ひーちゃんと呼ばれた緋勇は少し困った顔をして、

「ごめん。今日は駄目なんだ。」

「ええっ!? 何かあったの?」

驚きの声をあげる小蒔。既に皆でラーメン屋にというルートが予想していたのかもしれない。というより頭が
ラーメンモードに入っていたのかもしれない。

「何処か具合が悪いのか?」

醍醐が心配そうに顔を除く。

「ああ、いやいや、実はね。今、東北から従弟が来てるんだ。」

何処か嬉しそうに従弟の事を話す緋勇。

「従弟? ああ、時々ひーちゃんが話題に出す子かな…?」

小蒔がポンと手を打つ。

「そう! その子。葉佩九龍って言うんだけどね。いやも〜、これでもかっ! …って位可愛くてねえ〜。」

緋勇の顔が益々緩んでくる。

「そっか、折角遠くから来てくれてるんだもん。それは相手してあげたいよね。」

「うん、やっぱりなかなか会えないから、こんな時で無いと…。」

と話している間に校門の前まで辿り着いた。

「仕方ねえなあ、じゃあ今日はひーちゃん抜きか。」

「ごめん、この埋め合わせは今度必ず。」

「良いって、従弟くんと沢山遊んであげなよ!」

「ありがとう、皆。」

じゃあ此処で別れよう…と向きを変えようとしたその時、

「あっ、緋勇さんっ!!」

目の前から小さな影がぴょこんっ、と飛び出してきた。

「えっ、あれっ?」

「緋勇さん、おつかれさまですっ!」

現れた小さな影は緋勇の従弟である葉佩九龍だった。小柄な体と、大きな瞳が印象的などちらかと言うと中性的な
顔立ちである。その仕種や顔立ちでさぞやモテるであろうと雰囲気で分かった。

「あれっ、九龍! ずっと待っててくれたの?」

「へへ…。緋勇さんに会いたくて、来ちゃいました。」

九龍と呼ばれた子は照れ臭そうに頭を掻く。

「うわあ、その子がひーちゃんの言ってた従弟!? かわいい〜!」

小蒔が目を輝かせる。

「うんそう、改めて紹介するね。この子が俺の従弟、葉佩九龍。――ほら、九龍。皆にご挨拶。」

緋勇が九龍の頭をポンと撫でると九龍も大きな目をくりっと動かして、子供らしい仕種でぺこんとお辞儀をした。

「はじめまして。俺、葉佩九龍、小学6年生です。よろしくお願いしますっ!」

「ほお、礼儀正しい子だな。」

「そうね、可愛いし…。とっても良い子みたい。」

「えへへ…。」

照れる九龍。何故か緋勇も横で満足そうな笑みを浮かべている。

「ねえ、緋勇さん。東京見学に連れてってくれるって言ってたでしょう? 俺、すっごく楽しみにしてたんですよ、
早く行きましょうよー。」

九龍が緋勇の袖をぐいと掴んで引っ張る。

「そうだったね、九龍ったらそんなに楽しみにしてたのかい? わざわざ學園まで来ちゃうなんてもう…。
しょうがないなあ。」

と、口ではこう言っているが、顔は満面の笑みを浮かべている。…というより先ほどから顔は緩みっぱなしである。

「あ、これあれだ。従弟可愛くてしかたないんだ。従弟バカだ。」

思わず口にする小蒔。大当たりである。

「なんだ、東京見学させるつもりだったのか。だったらどうだ? 折角だし、その子も含めていつものラーメン屋に行ったら。」

と、そこで緋勇が従弟バカだと気付かない醍醐が提案する。

「え、良いの?」

「うふふ、かまわないわよ。龍麻の従弟ですもの、私達もお話したいわ。ね駄目かしら? 九龍くん。」

美里が笑いかけると、九龍が照れたのか、緋勇の影に隠れる。再度従弟バカ全開の顔をする緋勇。蕩けそうな顔をしながら

「だって。九龍、どうだい? 俺達がいつも行くラーメン屋があるんだ。折角だし九龍にも教えてあげたいなあ。」

「緋勇さんがお気に入りの店? 行きたい!」

「よし、じゃあ行こうか! 九龍クン!」

皆が笑顔で歩き出す中、何故か黙っている京一に気付く者はまだ居なかった。



九龍を連れていつものラーメン屋へと着た緋勇達。
これまたいつものカウンターに座り、各々ラーメンを注文する。程なくして、湯気を立てたラーメンが目前に次々と置かれた。

「うわあ…。美味そう。」

「美味しいよ。さ、九龍、食べて食べて。」

「はい、いただきまーす。…………美味しい!」

「良かった、それ、俺がいつも頼む醤油ラーメンなんだ。」

「良いなあ、緋勇さん。こんな美味しいラーメン屋さんにいつも行ってるんだ。それにお友達も綺麗なお姉さんばかりだし。」

と美里と小蒔に目線を送る。

「もう、九龍くんたら、ませてるなあ。」

「うふふ。」

へへっと舌をちょろっと出す九龍。皆もその雰囲気に呑まれ笑う。ホノボノとした空気が場に流れていた。


ラーメンも食べ終わり、一頻り色んな話をした後、流石にもう遅いから帰ろうと言う話になった。

「みなさん、ありがとうございます。俺すっごく楽しかったです。」

ぺこっとお辞儀をし、それから満面の笑みで御礼を言う九龍。

「みんな、ありがとうね。九龍凄く楽しかったみたい。」

「良いんだよ、ボク達も楽しかったよね! 九龍クン、またね!」

「はい、また遊んでください。」

「またな、いつでも遊びに来てくれ。」

「うふふ。じゃあまたね、九龍くん。」

手を振り別れる仲間達。ただ一人、その場に残っている人物が居た。――そう、京一である。

「おう、坊主。」

ぶっきら棒に声をかける。

「…………。」

九龍はちらっと京一を一瞥するが、すぐに視線を緋勇へと戻す。

「緋勇さん。すみません、俺、喉が渇いちゃった……。」

と、伏目がちに訴えると緋勇はすぐさま相好を崩し、

「良いよ良いよ、俺がジュースでも買ってくるよ! 京一、悪いけどその間九龍と一緒に居てくれる?」

「ああ。良いぜ。丁度こいつとは話したい事があるしな。」

「? よく分からないけど…。じゃあ、お願いね! すぐ戻るからー。」

と、向きを変えて走り出す。緋勇の姿が見えなくなったのを確認すると、京一と九龍。お互い無言で睨みあった。

「おい、坊主。お前、さっきからずっと俺に対してガン飛ばしてたよな? 何の真似だ、ありゃ。」

最初に口を開いたのは京一であった。

「…あんた、あれだろ? 自称、緋勇さんの“一番の”親友。」

「……だから?」

「…………んだよ。」

小声でぼそぼそと何事か呟く九龍。

「あ? んだって?」

よく聞こえず、京一が聞き返す。

「……くんだよ。」

「何が。何だって? 聞こえねーな。」

けけけ、と笑う京一をキッと睨みつけると九龍は大声で怒鳴った。

「むかつくんだよ、お前ー!」

叫んだ後、むすっとそっぽを向く。その仕種が歳相応で可愛らしい。

そっぽを向いたまま、ブツブツと愚痴りだす九龍。

「同じ學園に通ってて、毎日緋勇さんに会えて、しかも親友だとか抜かしやがる…。俺のが付き合い長いのに。
お前、むかつく。」

こいつも従兄バカなのか。だが緋勇が溺愛している従弟に羨ましがられるというのも何だか悪くない。
つい口元が緩みつつ、

「羨ましいか、坊主。……だあっ!?」

バシッと視界が覆われる。

「うぇっ、何だこれ…って目! 目が痛っ! これ…風船!? 中身は…麺?」

「拉麺爆弾だ、ばーか! さっき調合したんだよっ!」

「調合ってお前…。何処に隠し持ってたんだよ…。」

「ふん、ざまーみろ……って、あ。」

むつけた表情が打って変わって笑顔に変わる。

「ただいまあ。」

丁度ジュースを小脇に抱えた緋勇が帰ってきたのだ。

「お帰りなさい、緋勇さん。すみません、わざわざ…。走って買ってきてくれたんですか?」

「良いって良いって。ほら、お待たせ。どれが良い? …って、京一、どうしたの、それ。」

ギョッとした顔で京一のラーメンまみれの顔を見る。

「……お前の従弟お手製の拉麺爆弾のお陰だよ。」

ああ、と納得したように笑う緋勇。

「この子、理科が得意だから。」

「いやこれ理科は関係ないと思うぞ、絶対。」

「あはは、ごめんごめん。はい、ハンカチ。」

笑顔で京一の顔をハンカチで拭いだす緋勇。

京一の顔を拭いながら後ろで小さくなってる九龍に声をかける。

「駄目だぞ、九龍。イキナリ拉麺爆弾は。時と場所を考えて投げなきゃな。」

「はい…ごめんなさい。」

「っと、はい、京一。綺麗になった。……ほら、九龍。京一にも謝りなさい。」

くるっと向き直り従兄の顔で諭す緋勇。九龍は口を尖らせつつも、素直に従う。

「はい…。ごめんなさい、蓬莱寺さん。次はもう少し考えてからぶつけますね。」

「いやぶつける前提で謝られても。」

おもわず裏手で突っ込んでしまう京一。

「ごめんな、京一。この子、多分お前に嫉妬してたんだわ。」

「……ああ、みたいだなあ。」

ちらりと九龍を見ると、再度むつけた表情で緋勇の後ろに隠れてしまった。

「まあ、俺もよく京一や皆の話をしてたからなあ。多分その所為だ。」

ひーちゃんが俺の話を?(正確に言うと仲間“達”なのだが)そう聞いて一発でご機嫌になる京一。やはりこいつも
緋勇大好きっ子である。

「ま、仲間達と従弟の可愛さはまた別物だけどね。何だよ九龍ったら、嫉妬なんて。お前は充分可愛いよもーww」

「ひ、緋勇さん…!!」

往来の真ん中でひしっと抱き合う従兄弟’s。流石の京一もこれには少々引いてしまう。

「ま、俺にとっては皆が“一番”の存在なんだけどね。」

小声で緋勇が呟いた。





「――なんて事もあったっけなあ。」

ラーメンを啜りながらしみじみと語る緋勇。場所はマミーズ。あれから数年後、まさかの天香學園の同級生(詳しく言えばW主人公)に
なるとは思ってもいなかった二人だが、現に今、こうして一緒に学食を食べている。

「ふふふ、小さい九龍もそりゃもう可愛かった…ww京一には悪い事したけどね。」

当時の出来事を思い出しているのか口元が綻んでいる。

「九龍は覚えてる? あの出来事。」

「覚えてますよー。緋勇さんのお友達と一緒にラーメン食べに行った時ですよね。小さい俺も可愛かったなあ。」

「そうそう。で、京一に拉麺爆弾なんてぶつけちゃってね。」

「誰ですか、それ。」

「へ。」

「美里さんや小蒔さん、醍醐さんは覚えてますが。自称“一番”の親友なんて豪呼してる人なんて、ええ。全然、これっぽっちも知りません。」

「く、九龍…?」

「記憶にございません。」

あれから九龍も成長した。従兄である緋勇大好きっぷりも、勿論、嫉妬深さも以前より更にパワーアップして。

しれっとした顔でラーメンを啜る従弟を見ながら、思わず緋勇がぼやいた。

「……ごめんね、京一。多分、再会したらもう一度拉麺爆弾喰らうかも。いや、今の九龍ならもっと凄いのぶつけてくるかも…。」



後書き。
ギャグでもなくシリアスでもない。何とも不完全燃焼ネタ。落ちきれてなーい(^^;なんちゃって黄龍ネタやってるなら
逆の魔人+ちび九龍ネタも良いんじゃないかと思った次第。次にやる時はもっとはじけたギャグにしたいもんです。
ていうか京一好きさんや九龍好きさんにスライディング土下座。「このキャラはこんな酷い性格じゃない!」なんて苦情は一切受け付けぬ!←こら

書いててふと思ったんだけど、これ微妙に緋勇→京一的な扱いになるのかなあとか。

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