ロビン⇔アリサ←ウォーズマンな微妙なSS。


アリサさんに片思い(タイトル)

超人オリンピックも終わり、長い間行方をくらませていたロビンが帰ってきた。

「長い間、アリサには辛い思いをさせてしまったな…。今更許してくれだなんて言えないが…。」

後ろめたさがあるのだろう。目線を足元に下ろしながらも、どうにか謝罪の言葉を探しているらしい。だが目線を元に戻すと、
真っ直ぐアリサの瞳を見つめた。

「本当に…すまなかった。」

アリサの目には涙の粒が盛り上がっている。大きく深呼吸し、

「良いのよ。こうして貴方は帰ってきてくれたんだもの。」

と、それだけ言って薄く笑った。その瞬間、涙がポロッと零れ落ち、整った顔が歪む。堰を切ったかの様に涙が溢れた。

「ロビン、もう何処にも行かないで、あんな思い、二度としたくない。もう私を置いていっちゃ嫌…!」

ロビンの胸に飛び込むアリサ。

「ありがとう、アリサ。そして本当にすまなかった…!」

子供の様に泣きじゃくるアリサの体を愛おしそうにそっと抱き締めた。


さて、あれから数日が過ぎた。もうアリサもすっかり元気になった。

「アリサ、ちょっと良いかい?」

数時間前に出掛けていたロビンが帰ってきたらしい。玄関から呼ぶ声が聞こえた。パタパタと玄関に向かうと、夫とその後ろに
見慣れぬ人物が立っている。

「お帰りなさい、ロビン。…あら? ロビン、その方は…?」

「ああ。彼はウォーズマン。その、私の弟子、なんだ。」

弟子。そういえば確かにオリンピックで見た事があった。さり気なく目線だけ噂の弟子に向けると、戸惑っているのか。ロビンより
大分後ろに居心地が悪そうに視線をさまよわせながら立っている。

(ああ、そういえば、オリンピックの時の…。あの時はちょっと怖い感じだったけど、実際見ると大分違うみたい)

ふと、アリサの視線に気付くとウォーズマンはバツが悪そうに視線を足元に下ろした。

(まあ…、ふふふ。何だか借りてきた猫みたい)

思わず口元に微笑が浮かぶ。

「それで、このウォーズマンなんだが。暫くの間うちに置いてくれないか?」

突然の申し出に一瞬驚いたが、少し考えて、

「ええ、良いんじゃないかしら。貴方のお弟子さんですもの。きっと信用出来る方なんだわ。」

と二つ返事を返した。

「すまないな、アリサ。――ほら、ウォーズも、挨拶しなさい。」

話すタイミングを計りかねていたのだろう。話を振られて明らかに動揺したようにウォーズマンが頷く。

「あ、ああ。その、ウォーズマンだ…いや、です。よろしく、お世話になります。……ええと。」

緊張しているのか、はたまた普段から余り喋らないのか、口調が大分たどたどしい。

(あら、やっぱり可愛い)

自分よりずっと大きな背をしていながら中身は純粋な人見知りな子供の様に見えた。

「アリサよ。よろしくね、ウォーズマン。」

「世話をかけるな。こいつは多少口下手だが、良い奴なんだ。私からもよろしく頼むよ。」

「分かったわ。――さて、いつまで玄関でお喋りしてるつもり? 折角だからお茶にしましょう。今日は良い茶葉が手に入ったの。
さ、ウォーズマンも中に入って。そんなに遠慮しなくても良いのよ。」

思わず頭を掻くウォーズマン。こうして家族が増えた。


ウォーズマンは確かに口下手だ。だが暫くして大体アリサの仕事を覚えたらしく、時間のある時に何も言わずとも重い荷物を持ってくれたり、
買い物に行ったりと色々と家の事を手伝ってくれる様になった。そして今はテラスで紅茶を淹れてくれている。一度ウォーズマンの淹れた紅茶を
飲んだ時、同じ紅茶でもこんなに違うのかと驚いたと同時に大変気に入ってしまったのだ。それ以来、こうしてちょくちょく淹れて欲しいと
お願いする様になったのだ。

「今日も凄く美味しいわ。ああ、でも悔しいわね。紅茶の本場はイギリスでしょ? しかも教えたのは私なのに。これじゃ私の立場は形無しだわ。」

悪戯っぽく笑いながら冗談半分に愚痴を零すと、ウォーズマンも柔らかい表情を見せた。

「いや、アリサさんに教えて貰ったからこんなに美味しく出来たんだ。アリサさんのお陰だよ。」

「そう? なら良いわ。うふふ、紅茶に関しては私が師匠みたいなものかしらね。」

お互い笑い合いながらお茶を飲んだ。

「どう? 少しはうちに慣れたかしら。」

スコーンにジャムを塗りながら尋ねる。

「ああ、ロビンもアリサさんも、この屋敷の人皆が良くしてくれる。此処は温かくて良い所だな…。」

「ありがとう。でもそれは貴方の人柄のお陰でもあるのよ。」

と、にっこりと微笑み返す。

「そ、そう、だろうか…。」

ウォーズマンは照れくさそうに呟いて、それを隠すように紅茶を口に運んだ。

「本当よ。皆言ってるわ。あの人は良い人だ、とても助かっている。最初はちょっと怖かったけど、一緒に居ると空気が和らぐ気がする…ってね。
…ああ、スコーンを如何かしら?」

「ありがとう、いただくよ。…いや、皆買いかぶり過ぎだ。余り褒めないでくれ。かなり恥ずかしい…。」

スコーンの乗った皿を受け取りながら、ウォーズマンが呟いた。照れるウォーズマンを面白そうに、そして弟を見る優しい姉の様に微笑を湛えながら
アリサが見詰めた。ふと、アリサが思いついたように口を開く。

「そういえば、貴方はずっとロビンと一緒に居たの?」

突然の話題の変更に、一瞬慌てる。

「あ、ああ。ある境からずっとな。――ロビンには感謝しても仕切れないな。俺はもう少しで殺戮用の兵器とされる所だった。例えそれが
ロビン自身の復讐の為に駒として使う為だったとしても、な。外に出なければ俺はこんな風に変われなかった。」

「?」

ウォーズマンの過去を全ては知らないアリサが、いつもより雄弁に語るウォーズマンを見て小首を傾げる。

「ああ、いや。こっちの話だ、忘れてくれ。」

慌てて訂正するウォーズマンをじっと見つめるアリサ。

「…な、何か…?」

ウォーズマンの声が心なしか上擦る。

「貴方って、ロビンが行方をくらませていた間、ずっと側に居たのよね…。」

ふと、アリサの目が潤んでいるのに気付く。何故か心臓がドキリと跳ねた。息が苦しい気もする。

「私がこの屋敷でずっと待っていた間中、貴方はロビンとずっと一緒。…貴方は私の知らないロビンを知ってるのね。狡いわ、ちょっと羨ましい。」

最後は明らかに嫉妬を含んだ口調だった。その顔が何故かとても直視出来なくて、

「貴女の方が沢山ロビンの事を知ってるじゃないか。それこそ俺の知らない事を沢山。」

何て返して良いのか分からず、言葉を選びながら返事を返す。アリサは黙ったままだ。

「す、すまない。言い方が悪かっただろうか…。」

困った様におろおろと手を動かすウォーズマンをアリサがじっと見つめる。突然、彼女がぷっと吹き出した。

「ごめんなさい、そんなに慌てなくて良いのよ。貴方が良い人だから、ちょっと意地悪しただけ。ふふ、やっぱり貴方可愛いわ。」

「か、可愛い? 俺が、か?」

目を見開き、素っ頓狂な声でアリサの台詞を反芻する。その様子がまた可笑しくて、

「やだ、男の人に失礼だったわね、ごめんなさい。」

と謝ったものの笑いは止まらなくて、段々と笑い過ぎて涙まで出てきた。そんなアリサをポカンと見ていたウォーズマンも釣られて一緒に笑いだす。

「ねえ、聞かせて? 貴方と一緒だったロビンの話。」

漸く笑いが収まった所で目頭の涙を拭いながらアリサが言った。

「良いとも。辛い事もあったけど、楽しかった事も沢山あるんだ。」

ウォーズマンも楽しそうに話しだした。

暫くしてそこに話題の張本人のロビンがやってきた。

「何だい? 二人共、随分と楽しそうじゃないか。何かあったのかな?」

アリサとウォーズマンはロビンの顔をまじまじと見た後、お互いの顔を見合わせて、堪えきれないと言った風にクスクスと笑った。

「? 私の顔に何か? ――まあ良い。もう外は冷えてきた。さあ、中に入りなさい。」

「あら、もうそんな時間なのね。」

気がつけば、太陽が大分傾いている。アリサとウォーズマンが立ち上がる。途端、アリサが小さなくしゃみをした。

「アリサさん、此処は俺が片付けるよ。貴女は早く中に入った方が良い。風邪をひいたら大変だ。」

と言って、ケープを彼女の肩にかけた。

「ありがとう、じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね。」

「ロビンもアリサさんと一緒に行ってやってくれ。片付けが終わったら今夜の夕飯を考えなくては。ポトフなんてどうだい?
体の芯から温まるだろう。」

「それは楽しみだ。ではすまないが、後は頼むぞ。」

「ああ。」

肩を並べ、中に戻る二人を見ながら、ウォーズマンは何故か心の隅がチクリと痛むのを感じた。


(ロビンの話をする時のアリサさんは凄く綺麗だ。)

心の底からロビンを愛しているのだろう。表情には幸せが滲み出ていた。

(ロビンを想うアリサさんを見る度に…俺も嬉しくなる。…でも、何故か胸も苦しくなる。…分からない。この感情は何なんだろう…?)

あの時の泣きそうな顔を思い出すと、またもや胸の辺りがちくりと痛んだ。片付ける間、ずっとその感情の理由を考えていたが、結局その日には
分からず終いだった。


それは、初めての恋だった。ウォーズマンはロビンを愛しているアリサに恋をしたのだ。だがそれに気付くのはもう暫くしてからの事になる。


〜後書き〜
ロビン⇔アリサ←ウォーズマンっていう関係が凄く好きなんですよ…! ロビンも大好き、そしてロビンを好きなアリサも好き。
ちょっと歪んでるんです。こういうの嫌いな方はごめんなさい…(^_^;そしてケビンが生まれたらそれ+ウォーズマン←ケビンになります(笑)

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